キッズデザイン図鑑
Vol.16
JR九州キッズプロジェクト
<第5回キッズデザイン賞>
最優秀賞(フューチャープロダクツ部門)
経済産業大臣賞受賞作品
子どもたちにこそ、感性を育むよいデザインを
子どもにも、公共デザインの素晴らしさが必要です。JR九州が推進するキッズプロジェクトでは、子ども目線でつくりあげる鉄道や駅の空間を展開しています。
九州の子どもたちに大人気の熊本県阿蘇へ向かう特急「あそぼーい!」は、温かみのある木質の素材を列車内に多用し、素材感が醸し出す心地よさを表現したシンプルなデザインの列車。
シートの窓側には、少し小さい椅子が設置されており、子どもが必ず窓際にくるよう背もたれを前後に動かす工夫が施されています。車両には、キッズルームがあり、丸い木のボールをたくさん入れた「木のプール」が大人気。「くろカフェ」では地元の食材を使ったお菓子を用意しています。
その他にも、九州には子どもが楽しめるさまざまな列車があります。鹿児島県指宿まで運行している「指宿のたまて箱」は、浦島太郎伝説をもとにしたネーミングの車両。カラフルな車内には、窓側を向いた椅子が設置してあり、通り過ぎる風景を楽しむことができます。また、熊本地区にある有名な温泉地帯を走る「SL人吉号」には、最後尾に展望ラウンジがあり、270度に広がるガラス面は周囲をすべて見渡すことができます。
子どもの思い出を育む公共デザインへ
キッズプロジェクトでは、駅の空間づくりも手掛けています。2011年3月に九州新幹線の全線開業に合わせ、博多駅がリニューアルされました。
「おもちゃのチャチャチャ。ちゃちゃくらぶ」は、博多駅内につくられたキッズルーム。子どもと大人が鉄道を見ながら遊ぶスペースが用意されています。木のボールが埋められた木のプールや日本の伝統文化に触れることができる茶室も設けられ、子どもたちの笑顔が広がる空間に。
これらのデザインで使われている基本的な内装は、すべて木でできており、自然素材以外は使用していません。素材選びにも安全性の配慮がみられます。
さらに、博多駅の屋上には子どもが遊べる広場があり、活発に遊べる場としてだけでなく、日本の伝統的な祭を体験できる仕掛けなども施されています。
質の高い公共デザインは、子どもたちの感性や好奇心を育てます。こうしたデザインを通して、子どもたちの記憶は鮮明に刻まれ、地域の風景や街並みとともに心の中に残っていくことでしょう。