キッズデザイン図鑑
Vol.13
卓上電子顕微鏡
<第4回キッズデザイン賞>
最優秀賞(フューチャープロダクツ部門)
経済産業大臣賞受賞作品
科学をもっと身近な存在へ
2010年10月に名古屋にて「第10回生物多様性条約締約国会議(COP10)」が開催。温暖化防止対策と並び環境問題として生物多様性が注目を集めつつあります。「生物多様性」とは、地球上には多くの種類の生物や生態系が存在しているということ。キッズデザインでも、こうした時代の環境意識への高まりを受けた動きが行われています。中でも注目するのは、株式会社日立ハイテクノロジーズの「卓上電子顕微鏡」。科学分野の研究者をもうならせる画期的な製品として、社会に大きな影響を与えています。
開発当時、子どもの理科離れが問題視されていました。子どもたちに理科をもっと好きになってもらうことをコンセプトに、理科を身近な存在として感じることができる電子顕微鏡の開発に取り組みました。卓上という今までにない全く新しいアプローチと、使い勝手が極めてシンプルな点が特長のこの製品。初代機種より改良を加えたTM3000は、設置面積で約20%、質量で23%程度を削減するなど小型化を推進しています。高さは約56cmとデスクに十分置けるサイズ。観察倍率は、従来の1万倍から3万倍へと拡張しています。さらに、日立製作所は電子顕微鏡の分野で世界最高レベルの技術を持っており、0.1ナノメートル(1000万分の1ミリ)以下の原子でも観察することができる機種も開発しています。
ミクロ世界が子どもの未来を広げる
一方で、株式会社日立ハイテクノロジーズでは、製品開発に留まらず卓上電子顕微鏡を活用した社会貢献も推進しています。小学生を対象とした電子顕微鏡のデモンストレーションイベントや、毎週土曜日の夕方に放送しているラジオ番組『大村正樹のサイエンスキッズ』など、さまざまな活動を実施。活動を通してミクロの世界を体験した子どもたちの数は、延べ6000人を超えています。こうした活動が、子どもたちの科学技術への好奇心の刺激となり、未来を切り開くという点で、その貢献度は大きいといえるでしょう。
3万倍の世界は日常では決して観ることのできない、不思議が詰まった世界です。ミクロ・ワールドに魅せられた子どもたちが、将来は科学分野のリーダーとなっていくことを心より願います。