キッズデザイン図鑑
Vol.05
ドクターベッタ 哺乳びん
<第1回キッズデザイン賞>
金賞・経済産業大臣
マタニティデザイン賞受賞作品
新しい視点で 製品作りを考える
乳児にミルクを与える哺乳びんは、子育て用の製品と聞いて誰もが真っ先に思い浮かべ、同時に同じ形状を想像するものではないでしょうか。しかし「ドクターベッタ哺乳びん」のデザインはこれまでの先入観を覆す画期的な製品なのです。
従来の哺乳びんは、乳児がミルクを飲む際にどうしても寝た姿勢に近い体勢をとらざるを得ませんでした。そのため耳管へミルクが流れ込み、中耳炎などの病気を引き起こしてしまう恐れがあったのです。株式会社ズーム・ティーの「ドクターベッタ哺乳びん」は、独特なカーブを描くフォルムにすることで、母乳を飲む時と同じ姿勢でミルクを飲むことができるように工夫されています。ミルクを飲む力の弱い赤ちゃんでも飲みやすく、誤嚥を起こしにくい哺乳びんです。
子育ての現場から学ぶ 製品作り
もともとはアメリカ生まれの製品で、同社社長が自らの子育て経験から一目見て気に入り、日本での製造・販売の権利を取得しました。1995年から輸入商品を日本国内で販売開始し、以来、「デザインがよく、赤ちゃんがミルクをよく飲んでくれる哺乳びん」として多くの産婦人科、小児科、耳鼻科などの医師から推奨され、全国のお母さんたちからも支持されています。
さらに、品質の向上を図るために当初はポリカーボネート素材だった哺乳びんを、耐熱ガラス製を中心とした国内生産に切り替えました。しかし、ユニークなフォルムをしているため大量生産ができず、必死で製造工場を探しました。現在は東京下町のガラス職人が一本一本手作業で作っています。また、1日500本製造しても3〜4割を廃棄するほどの品質管理の徹底により破損事故を防いでいます。こうした赤ちゃんの安全や、健やかな成長を願うお母さんの安心への徹底的なこだわりにより高品質が維持されているのです。
子育てに関する親や大人の現実的な悩みを探り出し、解決することはキッズデザインの重要な目標の一つです。哺乳びんのように、「成熟商品」と思われがちな製品でも、実際に使われている現場に目を向け、科学の視点を取り入れることで改善すべき方向性も明らかになっていくのです。