2023.7.10|イベント活動

「キッズデザインミーテング 研究開発部会・こどもOS研究会」活動発表レポート



2023年6月7日キッズデザイン協議会では、「キッズデザインからうまれるオープンイノベーション」と題して現在活動している4つの研究会・プロジェクトについて、それぞれの推進リーダーより活動概要、2023年度の活動計画・予定の紹介が報告され、ゲストスピーカーとしてお招きした法政大学大学院教授である米倉誠一郎先生に各研究会についてコメントをいただきました。
研究会や情報交換会の活動を広く知っていただくことや、キッズデザインについて新たな気付きを得ていただく機会となりました。

[日 程] 2023年6月7日(水)
[会 場] エッサム神田 6F (オンライン ZOOMウェビナー併用)

研究会・プロジェクト活動報告「キッズデザインからうまれるオープンイノベーション」
・こどもOS研究会/川本 誓文様(大阪産業局)
・こまもりプロジェクト/福田 綾様(ミサワホーム)
・インクルーシブ・キッズデザイン/栗木 妙様(コクヨ)
・標準化検討部会/高橋 義則様(ユニバーサルデザイン総合研究所)
・個別コメント/米倉 誠一郎様

【キッズデザインから生まれるオープンイノベーション】
キッズデザイン協議会は、「顕彰事業」「CSD認証事業」「広報事業」「調査研究事業」の4事業で構成されている。今回のキッズデザインミーティングでは「調査研究事業」に焦点を当て、各研究会のリーダーが活動内容や今後の取組みを紹介した。 調査研究事業は大きく二つに分かれる。
一つは会員自らが立ち上げる研究会やプロジェクト活動。環境変化に応じた社会課題や会員の共通課題を解決しようと、業界横断的なオープンイノベーションを実現し、キッズデザインの新たな開発や子どもたちの明るい未来へつなげようという取組みだ。
もう一つは、一般生活者にも門戸を広げキッズデザイン普及促進のためのイベント「キッズデザインカフェ」や、会員間交流、セミナー、講演会、SDGsアイデアソン等の活動となる。

これらはいずれも異業種との交流から新製品・サービスのデザイン開発に繋げ、自社製品・サービスの特性を共有・紹介したいという会員の意見を収集しており、より良い活動につながっている。
「各研究会・プロジェクトは、いつでも参加が可能です。まずはオンライン見学やオブザーブとして気軽に参加してみてほしい」 研究開発部会の舟生岳夫部会長は呼び掛ける。

【こどもOS研究会】

発表者:公益財団法人大阪産業局 川本誓文氏
メンバー:大阪産業局/積水ハウス/コクヨ/ジャクエツ/GIS総合研究所

2008年にスタートした「こどもOS研究会」。子どもの安全・安心に資する研究や企業の商品開発に役立つアイデア発想法を研究している。「OS」とは、子どもが何かに集中(没頭)している時に立ち現れる、人間の基本的な欲求や衝動(競争心や探究心など)を指している。
本会では、特に子どもの遊びに着目し、屋外での行動観察調査から22種類の特徴的な遊び行為を抽出。ドキドキ・ワクワクを誘発する環境や空間について、「パタン・ランゲージ」という建築の方法論を活用し、子どもの行動言語として「プレイフル・デザイン・カード」という発想カードにまとめた。


同じ行為であっても、「楽しい」と「危険」は表裏一体。楽しいプレイフルモードの裏は、その行為に潜むハザード(危険)を記載している。



どのように使うのか――
一つは、新しいアイデアを生み出すための連想発想法(エクスカーション法)として利用する。
ランダムに選んだカードとテーマを掛け合わせて、言葉やイメージの連想を繰り返す。連想から出てきた「言葉」と「テーマ」を掛け合わせることで、今までにない新しい発想が閃く。
もう一つは、カードの裏面でハザードをチェックし、製品開発の段階で子どもの危険を予測するもの。
例えば、開発したい製品や環境、空間「X」に対する子どもの行為の可能性を物理的に検討。飛び上がる、飛び越える、飛び降りる、飛び込む等々、複合動詞でそれらを結びつけて考える。そこから安全・安心な製品等の開発に活かすという活用法である。

子どもの行動特性に関する知識が浅いと、親は子どもの行為を「危ないから」と止めてしまう。しかし、こうした関与は子どもの成長発達を阻害する要因にもなり得る。一方で行き過ぎると怪我の危険もあるため、どこで止めるのが最良なのかを理解するためにもカードを活用してもらいたい。

<2023年度の活動計画>
2023年度は8月にSDGsアイデアソンでこどもOS発想法の勉強会を、9月に日本建築学会で「子どもの行動特性に関する研究※(サマリー)」を3本紹介する予定。

※2022年度から実施している子どもの行動特性に関する研究。
キッズデザイン協議会には、3万3,000件余りの子どもの事故情報データ「キッズデザインデータベース」があり、事故時の子どもの性別・年齢、事故の場所や状況等を分析したデータがある。そこから約5,000件を抽出し、新たに、けがの程度からハザードレベルを特定。どのような遊びから事故につながったのか等、こどもOSとの関係性を分析し、結果を発表していく。

 ◎米倉氏コメント
子どもの行動特性を、遊びを通じて「データ化」「見える化」する。これを通じて企業だけでなく、子育て中の親が学び、子どもたちの遊びをコントロールすることができる。とても興味深い事例であり、とても大切な取組みだと実感した。



【子どもを守る情報の森プロジェクト(こまもりプロジェクト)】

発表者:ミサワホーム株式会社 福田綾氏
メンバー:セコム/コンビウィズ/秋草学園短期大学


インターネットや出版物等、誰もが簡単に情報を入手できるものの、果たして適切な情報が得られているのか?
この疑問を端緒に、子育てに役立つ情報や子ども製品・サービスに関する情報を整理し、体系化した上で一般に向けて紹介するコンテンツを目指して、2018年度にスタートしたプロジェクト。
迅速な情報入手と情報の正確性をいかに精査するか。同時に、参加企業が独自に発信する子育て情報をいかにエンドユーザーに届けるか等を検討しながら進行中だ。



2019年度に未就学児の保護者を対象に普段の生活や緊急時等の生活シーンごとの情報の入手法、役立った情報源といったアンケート調査を実施したところ、インターネットやインスタグラム等の手軽に情報を探せる媒体の利用が多かった。
2020年度は、前年の結果を受けてインスタグラム利用に関する座談会を開催し、2021年度はSNSの利用頻度、利用が多いSNSアプリ、情報の信頼性等についてアンケートを実施した。また、2022年度はSNS活用について座談会を開催した。

これらの調査結果を受けて、2021年度は日本子育て学会で「保護者の子育て情報取得におけるSNSアプリ活用の現状」を報告している。
2022年度の座談会では、子育ての内容によって情報源を使い分けていることが判明。例えば、インスタグラムは育児用品の情報、ツイッターはリアルタイムのイベント情報といった具合だ。しかし、子どもの病気など緊急性を要するものは病院に電話したり、ピンポイントで調べたい時はインターネット検索を利用したりと状況によって活用する媒体を分けていることがわかった。
参加者から「信頼できる新しい情報をまとめて見られる媒体があると嬉しい」「子どもに関わるものを作っている企業の試みをもっと身近に知ることができる場があるといい」という意見が寄せられ、今後の取組みとして検討していく。

<2023年度の活動計画>
2022年度の座談会の内容を詳細に分析し、情報提供の方法を細かく検討していく。また、キッズデザインマガジンを活用してプロジェクトの活動や会員企業の子育て情報を発信していく。
専門家による正しい情報発信として講演会、11月には日本子育て学会で成果発表を予定している。

◎米倉氏コメント
昨今、調べ物はSNSかインターネットが主になっている。きちんと分類してあり、目的ごとに探しやすいといい。このプロジェクトが扱っている情報ならば安心だという認証が取れれば、さらに多くの人が使ってくれる。
企業にとっても求められる情報が分かり、それをベースに製品開発に繋げられるし、双方向の窓口になれるとても良い取組みだと思う。


【インクルーシブ・キッズデザイン プロジェクト】
発表者:コクヨ株式会社 栗木妙氏
メンバー:ADKマーケティング・ソリューションズ/フレーベル館/LIXIL住宅研究所/東京大学大学院



「子どもたちの心のバリアはいつ頃から生まれるのか」という問いを、幼稚園や保育園の先生・保育士に投げかけてみた。最近では外国籍や障がいのグレーゾーンの子どもがいることもあり、分け隔てなく友達関係を築いているという。人との違いを意識する、バリアが生まれるのは小学校に進学する頃のようだ。

プロジェクトでは、多様性にはどのようなものがあるのか、多様はどのようなバリアを持っているのかを知ることから活動がスタートした。
マイノリティの当事者を知り、どのような商品・サービスが助けになるのかを考え、会員企業がその情報を活用して開発する―― 当事者と企業のアウトプットをサポートしたいと活動している。
「当事者を知る」ために、3グループに分かれて現地で話を聞いてきた。
1、 聴覚障害者 「あ〜とん塾」
2、 障害児 「柿の実幼稚園」
3、 LGBTQ 「プライド東京レガシー」

「あ〜とん塾」は、0歳から18歳までの聴覚に障がいのある子どもの生活支援・学習支援を行う。障がいを特別なこととせず、地域との交流を積極的に行っている。地域商店街の人々も聴覚に障がいがある子どもたちに対してバリアを持たずに会話している。
しかし、子どもたちからは「聴覚に障がいのある人たちの活躍を見ることができない。自分の未来に希望が描けない」という問題を提起された。プロジェクトとして、この辺りをサポートしていきたいと考えている。

「柿の実幼稚園」は、障害児や支援を必要とする子どもを積極的に受け入れている幼稚園。子どもたちと対峙する中で、何が必要なのか、どんなことができるのかを見つけている。障がいのある子どもたちには、どれだけ温かい手を持った親やサポーターがいるとこが大事か気付かされた。

「プライド東京レガシー」は、LGBTQの情報発信をしている常設施設。特にトランスジェンダーにフォーカスしている。近々、調査の結果を発表できる予定。

<2023年度の活動計画>
これまでの調査から見えてきたものを自分たちなりに深化させ、何ができるのか考えていきたい。また、得られた情報はオンラインで発信しているが、会員企業にもインプットの機会を設けたり、情報発信、講演会、ワークショップ等の場を設けたりしていきたい。

◎米倉氏コメント
我々が変わらなければいけない、ということ。米国の学校で、障がいのある子どもも一緒の教室と、健常者の子どもだけの教室があり、1年後には学問の進み方は後者の方が進んでいたが、前者の方が優しい子が多いという話がある。どちらが大事か。効率性で考えれば分けた方がいいが、それでいいのか?
クリエイティブな人間は多様性の中から現れることが明らかで、このプロジェクトが我々が変わるきっかけになると素晴らしい。



【標準化検討部会】
発表者:ユニバーサルデザイン総合研究所 高橋義則氏

キッズデザイン協議会において標準化活動は大きな事業の一つ。製品安全に関する法律、安全規格、業界基準等があるが、対象となるユーザーが明確で目的に合った使い方をするためのものが多い。しかし、子ども特性の想定外の動きや発達過程で生じる事故が絶えない。そこにメスを入れようというのが、標準化活動の目的。

2013年度からキッズデザインのガイドライン、CSD認証、JIS原案作成と、さまざまな活動をしてきた。
2017年度には、JIS Z 8150が制定され、「あらゆる事業者」に対して製品の設計、開発の中で子どもの安全性を確保するプロセス標準化を設けた。子ども用品だけでなく、一般生活者が使う用品においても子どもが接触する可能性があるもの全てを対象にしたことが大きな特徴だ。
子どもの安全性確保のために、製品の設計・開発を通じて以下の四つの活動を求めている。
1、 事故情報の確認と対処
2、 設計・開発の評価、検証、改善
3、 利用者への情報伝達
4、 事故情報やユーザーニーズの蓄積・活用
これらを繰り返し、スパイラルアップを図っていく。

キッズデザイン協議会が保有するデータベースには、全国の子どもたちの事故情報を抽出した情報が蓄積されている。また、製品設計時に活用できる子どもの身体寸法データもあり、これだけ詳細なデータベースはキッズデザイン協議会が日本最大だと思っている。

<2023年度の活用計画>
キッズデザインの考え方そのものが日本独自のもので、グローバル展開していきたいと考えている。
そこで、2018年度からスタートした国際標準化プロジェクトを一層進めていく。ISO/TC159/SC1(人間工学)の分野において、さまざまな提案をしてきた。2023年9月にドイツで開催される国際会議で、子どもの安全に関して人間工学の附属書という形で提案する予定となっている。
また、JIS Z 8150の改定に向けた議論を開始する。
ISO、JISとCSD認証との紐付けに関する議論を行い、キッズデザイン協議会における認証のステイタス向上のための戦略を構築していく。
多くの業種から参加してもらうことで精度の高い規格ができる。ぜひ、参加してもらいたい。

◎米倉氏コメント
今、日本は世界の中で落ち目の三度笠となっているが、信頼は厚い。日本のクオリティを国際標準化するというのは、日本の未来において非常に大事だ。
ぬいぐるみを例に挙げると、「世界一基準の厳しいオリエンタルランドに納めている」ことで、業界内ではその商品のクオリティは担保される。同様に、日本の基準をクリアしていれば、世界中の子どもたちが安心して使えると言われるようになってもらいたい。
しかし、日本は標準化を取るのが下手だった。この辺でぜひ、グローバルスタンダードを確立してもらいたい。