経済産業省、産業技術総合研究所 人間拡張研究センター、キッズデザイン協議会は
次世代を担う子どもたちを育む環境を創出するため、2007年より「経営者による意見交換会」を
継続して開催しています。今年度も12/14にオンラインで実施し、全国から多くの方にご参加いただきました。
残念ながら当日ご視聴いただけなかった方にも内容を共有するべく、当日の内容をレポートとし公開いたします。
【講演1:「未来は、あそびの中に。〜未来価値の共創〜」】
株式会社ジャクエツ
代表取締役社長
徳本達郎氏
■未来は、あそびの中に
幼児向け教材、遊具の製造販売、施設設計、施工まで総合的に手掛け、幼児施設や文化・商業施設など質の高いあそび環境を提供するジャクエツ。2015年には創業100周年を迎え、「未来は、あそびの中に」という新たなスローガンを掲げ、次の100年に向けて動き出した。
本業とは別に、あそびの研究所「PLAY DESIGN LAB」を創設。あらゆる分野の専門家と共に、あそびを研究、実証し、社会課題の解決に取り組んでいる。
徳本氏はジャクエツとPLAY DESIGN LABの関係についてこう話す。
「あそびの環境をつくるメーカー・デザイン会社としての取り組みと、ラボ。この2つのループを回し、より良い未来の創造、大きな社会課題をどう解決していくかという部分にジャクエツの存在意義があります」
■あそびの研究・実証事例
徳本氏はPLAY DESIGN LAB の事例を2つ紹介した。
一つは、2017年に開館した富山県美術館の屋上に設置された無料で遊べる公園。ジャクエツの遊具を配置した「オノマトぺの屋上」だ。美術館の作品が展示される前、プレオープン期間だけで57万人もの人が訪れた。複合的な施設作りの中で、あそびのエリアを手掛けた事例となる。
もう一つは、子どもの活動と睡眠を調査したもので、2021年のキッズデザイン賞で審査員特別賞を受賞した富士通との共同研究。高性能の3Dセンサーを200〜300人の幼稚園・保育園児に24時間装着してもらい、登園による集団の学びが、良い活動・良い生活習慣・良い睡眠となり、翌朝の登園につながるかを調べた。
休日も平日もともに早起きする子どもと、休日は遅く起きる子どもを比較すると、朝の活動量が全く違うことがわかったという。
「生活のリズムは大切で、朝、体が動くと将来的に頭の回転が良くなるし、学習的にも伸びていくことが証明されています」と解説する。
平日と休日を比較しても、平日の集団による遊びの運動量は圧倒的に多い。
徳本氏は、子どもが集まること自体が大きな価値を生んでいると話す。
「幼稚園や保育園は大切な場所です。休日に保護者が公園へ連れ出しても運動量は少ない。また、都会は公園自体が少なく、遊べる場所がないのが現状です。こうした課題をレポートにして社会に還元しています」
■未来価値とは 時を重ねるほどに豊かになっていく価値
「私たちの使命は、あそびの環境をデザインすることで、未来価値を創造することです」
SNSが全盛の今、「いいね」を多くもらいたい、すぐに認めてもらいたいという欲求は高く、効率性やすぐに結果を求める傾向が強い。しかし、未来価値は今すぐ実現できるものではなく、子どもたちが成長する過程、長いスパンで変化し大きく花開くもの、時を重ねるほどに豊かになっていく価値だと考えるという。
子どもたちのしなやかな感性の根っこを育むためにできることは何か――。
ジャクエツでは、未来価値をつくるために社員が共有する言葉を集めた『VALUE BOOK』を作成し、顧客や関係先にも配布している。
「パーパスのような位置付けで、まずは共感してもらうことです」
「ジャクエツは、今の子どもたちだけでなく、これから生まれてくる子どもたちのことを考え、社会全体で事故が減るという成果目標を社員に伝えています。企業の成果は利益を上げるだけではない、会社の外側にもあるのです」
徳本氏は、ドラッカーの「組織の成果は会社の外にある」という言葉を引用し、企業の存在意義について考えを述べた。
■人生100年時代、答え合わせは100年後に
ヨハン・ホイジンガは著書「ホモ・ルーデンス」で「あそびは文化に先行し、人類が育んだあらゆる文化はすべてあそびの中から生まれた」と記している。 「あそぶ」ことは人間に備わった能力だ。あそぶためには共感が必要であり、それが人間をつくったとジャクエツは考え、取り組んでいるという。
「人生は100年時代に突入しました。子どもが良い会社に就くためのキッズデザインではなく、もっと長い、100年スパンでキッズデザインを考えていこうというのがジャクエツの合言葉になっています。この答え合わせは100年後に」
文:遠藤千春
次世代を担う子どもたちを育む環境を創出するため、2007年より「経営者による意見交換会」を
継続して開催しています。今年度も12/14にオンラインで実施し、全国から多くの方にご参加いただきました。
残念ながら当日ご視聴いただけなかった方にも内容を共有するべく、当日の内容をレポートとし公開いたします。
株式会社ジャクエツ
代表取締役社長
徳本達郎氏
幼児向け教材、遊具の製造販売、施設設計、施工まで総合的に手掛け、幼児施設や文化・商業施設など質の高いあそび環境を提供するジャクエツ。2015年には創業100周年を迎え、「未来は、あそびの中に」という新たなスローガンを掲げ、次の100年に向けて動き出した。
本業とは別に、あそびの研究所「PLAY DESIGN LAB」を創設。あらゆる分野の専門家と共に、あそびを研究、実証し、社会課題の解決に取り組んでいる。
徳本氏はジャクエツとPLAY DESIGN LABの関係についてこう話す。
「あそびの環境をつくるメーカー・デザイン会社としての取り組みと、ラボ。この2つのループを回し、より良い未来の創造、大きな社会課題をどう解決していくかという部分にジャクエツの存在意義があります」
徳本氏はPLAY DESIGN LAB の事例を2つ紹介した。
一つは、2017年に開館した富山県美術館の屋上に設置された無料で遊べる公園。ジャクエツの遊具を配置した「オノマトぺの屋上」だ。美術館の作品が展示される前、プレオープン期間だけで57万人もの人が訪れた。複合的な施設作りの中で、あそびのエリアを手掛けた事例となる。
もう一つは、子どもの活動と睡眠を調査したもので、2021年のキッズデザイン賞で審査員特別賞を受賞した富士通との共同研究。高性能の3Dセンサーを200〜300人の幼稚園・保育園児に24時間装着してもらい、登園による集団の学びが、良い活動・良い生活習慣・良い睡眠となり、翌朝の登園につながるかを調べた。
休日も平日もともに早起きする子どもと、休日は遅く起きる子どもを比較すると、朝の活動量が全く違うことがわかったという。
「生活のリズムは大切で、朝、体が動くと将来的に頭の回転が良くなるし、学習的にも伸びていくことが証明されています」と解説する。
平日と休日を比較しても、平日の集団による遊びの運動量は圧倒的に多い。
徳本氏は、子どもが集まること自体が大きな価値を生んでいると話す。
「幼稚園や保育園は大切な場所です。休日に保護者が公園へ連れ出しても運動量は少ない。また、都会は公園自体が少なく、遊べる場所がないのが現状です。こうした課題をレポートにして社会に還元しています」
「私たちの使命は、あそびの環境をデザインすることで、未来価値を創造することです」
SNSが全盛の今、「いいね」を多くもらいたい、すぐに認めてもらいたいという欲求は高く、効率性やすぐに結果を求める傾向が強い。しかし、未来価値は今すぐ実現できるものではなく、子どもたちが成長する過程、長いスパンで変化し大きく花開くもの、時を重ねるほどに豊かになっていく価値だと考えるという。
子どもたちのしなやかな感性の根っこを育むためにできることは何か――。
ジャクエツでは、未来価値をつくるために社員が共有する言葉を集めた『VALUE BOOK』を作成し、顧客や関係先にも配布している。
「パーパスのような位置付けで、まずは共感してもらうことです」
「ジャクエツは、今の子どもたちだけでなく、これから生まれてくる子どもたちのことを考え、社会全体で事故が減るという成果目標を社員に伝えています。企業の成果は利益を上げるだけではない、会社の外側にもあるのです」
徳本氏は、ドラッカーの「組織の成果は会社の外にある」という言葉を引用し、企業の存在意義について考えを述べた。
ヨハン・ホイジンガは著書「ホモ・ルーデンス」で「あそびは文化に先行し、人類が育んだあらゆる文化はすべてあそびの中から生まれた」と記している。 「あそぶ」ことは人間に備わった能力だ。あそぶためには共感が必要であり、それが人間をつくったとジャクエツは考え、取り組んでいるという。
「人生は100年時代に突入しました。子どもが良い会社に就くためのキッズデザインではなく、もっと長い、100年スパンでキッズデザインを考えていこうというのがジャクエツの合言葉になっています。この答え合わせは100年後に」