経済産業省、産業技術総合研究所 人間拡張研究センター、キッズデザイン協議会は
次世代を担う子どもたちを育む環境を創出するため、2007年より「経営者による意見交換会」を
継続して開催しています。今年度も12/14にオンラインで実施し、全国から多くの方にご参加いただきました。
残念ながら当日ご視聴いただけなかった方にも内容を共有するべく、当日の内容をレポートとし公開いたします。
【講演2:「子どもたちの未来をつむぐエネルギー」】
東京ガス株式会社
都市生活研究所 所長
三神彩子氏
■暮らしとエネルギー
東京ガス都市生活研究所は東京ガスが100周年を迎えた1986年に、次の100年に向けて発足したシンクタンク。「生活者にとって本当に価値のある暮らしは何か」を研究・調査し、発信している。
ガス事業誕生から今年、150周年を迎えた。ガスの普及で生活が大きく変わることになるが、その急激な変化に順応していくためには時間もかかる。「ガスの使い方がわからない」という人のために東京ガスは大正時代、安全に美味しく調理するための料理教室をスタートさせている。
1969年、環境に優しいエネルギーであるLNG(液化天然ガス)の輸入が始まり、暮らしはさらに変化し、現在の暮らしの基礎が築かれた。しかし今ここにきて、私たちは気候変動問題に直面しており、持続可能な暮らしに向けた取り組みが世界中で始まっている。
「私たちは今、大きな壁に直面しています。天然ガスは環境に優しいとはいえ、やはり化石燃料を使えば二酸化炭素を排出し、気候変動がより進んでしまいます」
エネルギー事業者の東京ガスも調達から運搬、提供、再生可能エネルギーに至るまでさまざまな取り組みを推進している。
■学校で省エネ教育実施、実践の定着目指す
都市生活研究所では、消費者の環境に関する意識調査を実施した。
それによると、約8割の人が「環境配慮は次の世代のために必要」と考えていることが分かる。一方で行動を起こしているかというと、実際は難しいようだ。
環境問題を意識するようになった経験や出来事について聞くと、年代が高いほど「台風や豪雨、猛暑の体験」を挙げ、「昔と違う」と感じ気候変動を実感している。反対に、10代は「学校での環境に関する授業」が最も多い。
日本政府は温室効果ガスの排出を2050年までに実質ゼロ(カーボンニュートラル)を掲げた。家庭においては2030年までに約66%減という大きな削減目標が立てられた。三神氏は、省エネ行動を社会規範として定着させることが肝要だと訴える。
「関心のある人だけがやっても世の中を変えるのことは難しいのが現状です。そこで、皆さんが同じように取り組むことが重要で、省エネ行動が社会規範となるよう子どもたちに省エネ教育を実施しました」
東京ガスでは、カーボンニュートラル・脱炭素の取り組みを進める中で、省エネ教育プログラムを開発。2017年から4年間、全国の小中高校約1万名の児童・生徒を対象に省エネ教育を実施し、家庭のCO2排出量に与える影響を検証した。
授業は、1週間に1回、45〜50分を6週間続け、座学だけでなく体験学習(エコ・クッキング)も盛り込んだ。
その結果、家庭での電気とガスによるCO2排出量を教育前から5%の削減に成功したという。また、行動実践率は教育の前後で21ポイント増加、継続に関しては行動できるようになった子どもの95%が1年後も持続できている。
■キッズデザインと環境配慮
「これからのキッズデザインを考えた時、環境への配慮は外すことができない観点ではないでしょうか。省エネ教育は実証を終え、今度は実装していかなければなりません。多くの方と手を取り合いながら全国に広めていきたいと考えています」
生涯にわたり健康で心豊かな充実した生活を送るためにも、地球環境に配慮した生活を支える地域社会を目指していかなければならない。150年前、ガスが人々の生活に登場した時と同様、生活の大きな変わり目には人々の意識改革が必要だ。脱炭素型のライフスタイル実現に向け、連携して取り組んでいきたいと三神氏は展望する。
文:遠藤千春
次世代を担う子どもたちを育む環境を創出するため、2007年より「経営者による意見交換会」を
継続して開催しています。今年度も12/14にオンラインで実施し、全国から多くの方にご参加いただきました。
残念ながら当日ご視聴いただけなかった方にも内容を共有するべく、当日の内容をレポートとし公開いたします。
東京ガス株式会社
都市生活研究所 所長
三神彩子氏
東京ガス都市生活研究所は東京ガスが100周年を迎えた1986年に、次の100年に向けて発足したシンクタンク。「生活者にとって本当に価値のある暮らしは何か」を研究・調査し、発信している。
ガス事業誕生から今年、150周年を迎えた。ガスの普及で生活が大きく変わることになるが、その急激な変化に順応していくためには時間もかかる。「ガスの使い方がわからない」という人のために東京ガスは大正時代、安全に美味しく調理するための料理教室をスタートさせている。
1969年、環境に優しいエネルギーであるLNG(液化天然ガス)の輸入が始まり、暮らしはさらに変化し、現在の暮らしの基礎が築かれた。しかし今ここにきて、私たちは気候変動問題に直面しており、持続可能な暮らしに向けた取り組みが世界中で始まっている。
「私たちは今、大きな壁に直面しています。天然ガスは環境に優しいとはいえ、やはり化石燃料を使えば二酸化炭素を排出し、気候変動がより進んでしまいます」
エネルギー事業者の東京ガスも調達から運搬、提供、再生可能エネルギーに至るまでさまざまな取り組みを推進している。
都市生活研究所では、消費者の環境に関する意識調査を実施した。
それによると、約8割の人が「環境配慮は次の世代のために必要」と考えていることが分かる。一方で行動を起こしているかというと、実際は難しいようだ。
環境問題を意識するようになった経験や出来事について聞くと、年代が高いほど「台風や豪雨、猛暑の体験」を挙げ、「昔と違う」と感じ気候変動を実感している。反対に、10代は「学校での環境に関する授業」が最も多い。
日本政府は温室効果ガスの排出を2050年までに実質ゼロ(カーボンニュートラル)を掲げた。家庭においては2030年までに約66%減という大きな削減目標が立てられた。三神氏は、省エネ行動を社会規範として定着させることが肝要だと訴える。
「関心のある人だけがやっても世の中を変えるのことは難しいのが現状です。そこで、皆さんが同じように取り組むことが重要で、省エネ行動が社会規範となるよう子どもたちに省エネ教育を実施しました」
東京ガスでは、カーボンニュートラル・脱炭素の取り組みを進める中で、省エネ教育プログラムを開発。2017年から4年間、全国の小中高校約1万名の児童・生徒を対象に省エネ教育を実施し、家庭のCO2排出量に与える影響を検証した。
授業は、1週間に1回、45〜50分を6週間続け、座学だけでなく体験学習(エコ・クッキング)も盛り込んだ。
その結果、家庭での電気とガスによるCO2排出量を教育前から5%の削減に成功したという。また、行動実践率は教育の前後で21ポイント増加、継続に関しては行動できるようになった子どもの95%が1年後も持続できている。
「これからのキッズデザインを考えた時、環境への配慮は外すことができない観点ではないでしょうか。省エネ教育は実証を終え、今度は実装していかなければなりません。多くの方と手を取り合いながら全国に広めていきたいと考えています」
生涯にわたり健康で心豊かな充実した生活を送るためにも、地球環境に配慮した生活を支える地域社会を目指していかなければならない。150年前、ガスが人々の生活に登場した時と同様、生活の大きな変わり目には人々の意識改革が必要だ。脱炭素型のライフスタイル実現に向け、連携して取り組んでいきたいと三神氏は展望する。