2008.10.24|研究開発活動

【こどもOS研究会】創成期
第2回ワークショップで確信した「アイデアを創出させることばの力」

アイデアを創出させることばの力


第1回ワークショップの成果は、「Mineルール」など、子どもの本質的な行動特性を、分かりやすい言葉で表現できることに気づけたことでした。しかし、抽象的な行動特性をアイデアの創出にどう結び付けるのかというプロセスの課題が残りました。

大阪ことばで商品の「遊びゴコロ」を分析



2008年10月24日、大阪府立中之島図書館の文芸ホールにて、第2回ワークショップ「大阪ことばからのイメージ創造」が開催されました。
このワークショップの目的は、地域固有の情緒豊かな「ことば」の力を借りて、アイデアが創出できるかという実験を行うことでした。



冒頭、上方文化評論家の福井栄一氏による大阪ことばの講義があり、福井さんからは、立川談志師匠が三遊亭圓福から教わったとされる“なぞかけ”「葬儀屋」が紹介されました。
「うぐいす」とかけて「葬列」と説く。その心は? 「なくなくうめ(埋め)に行く」という語呂合わせを披露し、よくできたことば遊びの面白さと奥深さが伝えられました。



第2部では、子どもを表す暖かな眼差しを含んだ大阪ことば、「いちびり」、「やんちゃ」、「しっかりもん」、「かいらし(い)」の4語を使い、身近な商品が持つイメージを、大阪ことばの4語が持つイメージの配合割合に変換するワークが行われました。







次に4語の中から一つを選び、その成分を増やしたら、どんなアイデアが生まれるかを考えます。例えば、「こけし型のダンベル」であれば、「いちびり」成分を増やして、ダンベルこけしをマトリョーシカのように入れ子にする。といったようなアイデアが生まれました。



この新しいスタイルのワークショップでは、以下の重要な気づきが得られました。

・情緒的なことばの共感性: 「やんちゃ」のような情緒的な単語は、標準語の「いたずら好き」といった直接的な意味だけでなく、「活発で遊び心のある」「予測不能で面白い」といった、デザインに付与したい多面的な情緒的価値を内包していることが明らかになりました。
・共通認識の形成: 「いちびり」や「かいらしい」という大阪人なら誰でも知っている単語は、そのニュアンスをもとに、アイデアやイメージを膨らませることができることがわかりました。

成果と意義:「ランゲージ」構築への確実な一歩

「大阪ことば」が持つ表現の幅と深さが、アイデアを創出するための強力な触媒となることが立証されたことで、こどもの行動特性(OS)は、情緒的価値を含む共通認識である『ことば(ランゲージ)』によって、初めてデザイン発想のツールとして機能するという確信が得られました。



これにより、研究会は子どもの行動特性を統一的な「ことばの辞書」として定義する、「こどもOSランゲージ」の開発へと本格的に舵を切ることになります。

ワークショップの最後には、前回に続き、曽和具之氏(神戸芸術工科大学 准教授)チームによるドキュメンテーションとリフレクション(省察)が行われ、参加者全員が学びのプロセスを客観的に振り返り、体験を確実な知恵として定着させました。





主催
NPO法人キッズデザイン協議会 こどもOS研究会

共催
大阪府立中之島図書館

こどもOS研究会リーダー
大阪府産業デザインセンター  川本 誓文
積水ハウス株式会社      中村 孝之

ワークショップ ファシリテーション
福井 栄一  上方文化評論家
川本 誓文  大阪府産業デザインセンター

ドキュメンテーション・リフレクション
曽和 具之  神戸芸術工科大学 准教授

司会
高瀬 愉理  大和ハウス株式会社 総合技術研究所

ドキュメンテーションスタッフ
本田 美美  神戸芸術工科大学
柴田あすか  神戸芸術工科大学
石川  泉  京都市立芸術大学

スタッフ
高瀬 愉理  大和ハウス工業株式会社 総合技術研究所
櫻井 香織  大和ハウス工業株式会社 総合技術研究所
寺島 正之  パナソニック電工株式会社 デザイン部
川添 博史  特定非営利活動法人 GIS総合研究所
上田  浩  特定非営利活動法人 GIS総合研究所
国司 輝夫  特定非営利活動法人 GIS総合研究所
中村 孝之  積水ハウス株式会社 ハートフル生活研究所
河崎由美子  積水ハウス株式会社 ハートフル生活研究所
谷合美哉子  大阪府商工労働部ものづくり支援課デザイン振興G
杉本  清  大阪府産業デザインセンター
川本 誓文  大阪府産業デザインセンター
西村 睦夫  大阪府産業デザインセンター
福嶋 敏三  大阪府産業デザインセンター

キッズデザイン協議会 こどもOS研究会参加企業・団体
大和ハウス工業株式会社
パナソニック電工株式会社
特定非営利活動法人GIS総合研究所
積水ハウス株式会社
大阪府(大阪府産業デザインセンター)

Special Thanks
上田 信行  同志社女子大学 現代社会学部 現代子ども学科 教授
ムラタチアキ ハーズ実験デザイン研究所 代表取締役
濱崎  浩  近畿経済産業局 産業部流通部・サービス産業課サービス産業室長補佐
横井 泰治  特定非営利活動法人 キッズデザイン協議会 研究開発部長
真野 修三  明治安田生命保険相互会社
向井栄美子  大阪府政策企画部